英 虞 湾
おじさん達の夏休みの1回目は的矢湾,2回目は伊勢志摩方面,3回目は神津島,4回目は三宅島 

そして今回は・・・・当然順番としては,「八丈島か小笠原諸島だろう」との声が聞こえてきそうである。全くその通りで,返す言葉もない。

 実は1昨年,おじさん達は,八丈島に挑戦したのではある。ところが,いつもそうであるが,この時も台風の余波がひどくて伊良湖水道

を越えて外洋(おじさん達にとって,渥美湾,伊勢湾をでれば立派に外洋だ)に出て2時間余り、あまりの波の悪さに耐えられず引き返す

はめになったのである。(台風は遠ざかっているのに断念するとは情けない話であるが・・)


 「そのあたりの事情はまあ分かったが、どうして今年再挑戦しないのだ?」・・それはムニャムニャ・・・・おじさん達といえども忙しいのです。

 八丈島をあきらめた今年は,台風は影かたちもなく穏やかな日々。ただし,猛暑だ。

8月11日(土)全国的に盆休み 午前7時に出港予定であったが,集まったのが7時で艤装する準備時間がない。おじさんの1人が「とにかく,

出港しよう。セールの準備は海上でやればよい。」とが言い出す始末,このおじさんの気持ちは分からなくもない。今日の目的地の英虞湾

(浜島港)は初めての入港である。知らない港には明るいうちに入るのはヨットの基本である。河合さんの「先は長いのですから,少しくらい

遅れてもいいでしょう」この一言でポンツーンでいつもの通りに出港の準備をする。


 ホームポート(形原港)を出て渥美半島に向かう。夏は南風と相場は決まっているのに,なんと冬の北西の風, 向かい風を覚悟していたのに,アビーム

でタックもせずに,一直線で伊良湖まで行けそうである。出港して30分静かな帆走を楽しんでいたら,いきなりディーゼルの音が響く,理由はすぐに分かった。


 日産マリーナ方面からヨットが1艇こちらの方向に向かって来ているからである。つまり,カタリナヨットの帆走は遅いので,これに負けてはいけないとエンジンを

かけて機帆走でスピードを上げようという魂胆である。おじさんの見栄である。やれやれ・・・それでも確実に追いつかれている。なぜだ,あのヨットも機帆走に

違いないと例のおじさんの声・・・・(カタリナヨットの名誉のためにつけ加えておくが,帆走性能だって悪いって程ではない。水を250L,燃料を100L,アンカーを3つ,

その他諸々の道具を積んでいる。要するに重いのである)・・・・
伊良湖岬 渥美火力発電所
伊良湖岬付近で,競うのをあきらめて,エンジンを止めて帆走にはいる。聞こえるのは,かすかな風の音,バウを切る波の音。それと同時に伊良湖半島から蝉の声

が聞こえてきた。ちょっと耳を疑ったがまぎれもなく蝉の声である。この静けさこそがヨットと言うものだ。

見慣れた神島沖を予定より30分早く11時に通過。海の色が,三河湾の緑色系から太平洋の青色に変わる,若干のうねりはあるものの極めて穏やかな海である。

 外洋に出ると必ずやることがある。それはケンケンを流すことである。獲れるかどうかの問題ではない。これを流すと如何にも航海に出ている気分になれるからだ。

一度のタックもジャイブもすることもなく,(これはおじさん達の常である)的矢湾沖 を午後1時通過。実はここで前回の経験を生かせずにおじさん達は,一つ失敗をした。

 海の中に突然表れる赤い旗の付いた竹ざおである。定置網の場所を示すものであろうが,これが海岸から垂直に櫛の歯のように何本か伸びている。そのうちの一つに

不注意にもつっこんでしまった。幸い,この時期は網が設置されていないのか,それとも網が吃水より深いところにあったのか分からないが無事に通過した。これより

危険をさけて海岸より十分離れて航行する

伊良湖岬 灯台


大王崎沖を2時に通過,このころから風がさらに回って北風となりランニングになる。向かい風もつらいが追い風もつらい。後ろから来る風とヨットの

スピードが相殺されて,風を感じなくなり暑いからだ。 ドジャだけでは,日差しをさえ切れず,コックピットにピーチパラソルを立てるというチンドン屋風である。


 さて,伊良湖水道より狭い布施田水道を通過する。とは言っても,貨物船ならともか く,ヨット程度ならそれほど神経を使う必要はない。ましてや

カタリナヨットはウイングキールで吃水は1.5Mと浅い。 それでも,海図に従って航路に入る。当然のことながら通過できるのはこの水道だけだから,

この辺りのヨットは自然に集まってくる形になる。それがいけない,ヨットをみるとすぐに対抗意識を燃やすおじさんがいる。水道に入ったらジブセールを

巻いてフル回転でエンジンを回している。カタリナヨットはセーリングは弱いがエンジンは大きいので機走は比較的強い
コックピットに取り付けられたピーチパラソル
そのおかげで,水道通過中は何とか首位(?)を保った。殆ど並ばれた時,目の前に例の赤い旗のついた竹ざおが目に入った。それに気付いた

ライバル(?)のヨットは大きく反転して沖に向かった。


 おじさん達は,的矢湾沖でも大丈夫だったからOKだといってそのまま直進する。ぶっちぎりだ。と喜んでいたおじさんもいたが,冷や汗ものである。

温厚な河合さんもこれには、苦笑い。

                                                                この海の色 三河湾とは違う 黒潮の海?

英虞湾に入ったものの浜島港へ入港を案内を示すブイ(G1)が思ったより湾の奥にあり見つからず焦る。これが見つかれば後

は簡単で湾港案内図に従って自然に「民宿かいゆ」の養殖筏に接岸。

 
 午後4時,予定よりも1時間早い9時間で着いた。さすがに機走と機帆走の効果があったようだ。セ−ルだけではこうはいか

なかっただろう。

民宿「かいゆ」 養殖筏に泊める,カタリナ30  後のホテルは関係ない 
「かいゆ」の料理がすごい「伊勢エビ・あわび・さざえ」の山盛りで3人のおじさん達ではいくら頑張っても食べ切れそうもない。作ってくれた人に感謝しながら時間

をかけて味わい食べる。さらにだめ押しとばかりにご飯と吸い物が出てきた。


 もうだめ,それでも手も付けないのは失礼だろうと,まだ,全く手が付けてなかった3品を(煮魚(まぐろ),固定燃料で焼く肉,ご飯)3人で手分けして手をつける

作戦を立てた。

 若干1名,責任を果たさず結局ご飯は全く手つかずで終わってしまった。こんなに苦労するの程の豪華な食事である。
                                                           豪華な料理 食べきれない
 朝,起きてびっくり,何と雨が降っている。もう1カ月以上雨らしい雨はない・・・それも並の雨ではない土砂ぶり。宇連ダムに水がたまるのは嬉しいが,よりによって今日,降ることはないのに・・・・

ところが,この雨を大喜びしているおじさんが一人いる。


「出かける時は傘を持って出るのは常識で〜す。」

と得意になっている。それはそうだが,この渇水で大騒ぎしている時,傘を持って出るとは用心が良いことだ。 しかし,「かいゆ」の養殖筏から離岸する時には,青空が広がっていた。折角の傘も役立たず・・・・
今日(8月12日)は,安乗港(的矢湾)に行くだけで日程には余裕がある。英虞湾をのんびり巡ることにした。真珠で有名な英虞湾らしく、それらしい筏が

湾内に占領している。筏の間をそう〜と抜けるように進める。


この湾の景色も美しいが,海賊船だの2階建ての船だの,はてはピンク色の観光船が走り回り楽しい。航路の深さは十分あるのだが,島の間を通り抜け

るには,水深とともに,上空の電線にも神経を使う必要がある。


海賊船?


賢島あたりが一番にぎやかであったが まだ時間が早いのか(9:30頃) 人影はまばらであった。真珠いかだ、青松の美しい小島、を巡り湾内を見学する。

 英虞湾をでると,例の布施田水道である。今回は風がないのでも機走も止むを得ない。水道の中ほどにある大島。きれいな島で見ているだけで気持ちが良い。

ここで海水浴をしている家族らしい人影が見える。プライベートビーチの雰囲気である。残念ながらヨットでは,暗礁が多くてとても近づけそうもない。帰省している孫のために,

おじいさんが漁船で案内したのだろう。

 大王崎灯台の見学を兼ね 昼食のため  波切港へ・・・・

波切港に入港するも,停泊する場所が見つからない。すでにヨットが2艇入っていたので,その隣と思ったが,釣り人が多くて近づけない。奥に入って,ここなら

迷惑にならないだろうと思われる場所を見つけて,やり付けで停める。その時漁船が入ってきて,手でそこはダメだという合図,ガックリ重いアンカーをやっとの思

いで揚げてうろうろしていたら,先程の漁船が見かねたのか,岸壁の端に停めろと合図してくれた。

 
ヨットは帆走は簡単であるが停泊するには,技術と運がいる。
大王崎 波切港

 海の上も暑いが,陸地はさらに暑い。そのなか大王崎灯台に当然のことながら徒歩で向かう。灯台までの細い道にみやげ物屋、食堂があり、

そこで昼食をとる事となった。


 「伊勢名物は伊勢うどん」とメニューに無いうどんを小笠原さんが注文した 出てきたうどんを見てびっくり,何と汁がなく白玉うどんだけである。

おいおい,いくら何でも手抜きじゃ無いの?


  よく見るとうどんの下の方に黒い醤油のような汁がある。「よくかき混ぜて・・」と言われた訳が分かった。

おそるおそる食べてみるとそれがなかなか美味い。

波切港から見た大王崎の灯台

さすがに灯台までいくと風がある。ヨットも何艇か見える。ここから見るヨットは適度なヒールを保ちながら実に優雅に帆走している。

 我々のヨットもあのように見えるのであろうか。実際は暑いは,揺れるはで乗りごごちは極めて悪い。その上、遅いと来て,優雅さには程遠い

のが実感だが・・・。 


的矢湾の安乗港に5時に入港,ここは何度も来て勝って知ったるところだ,それに,旅館を通して漁港にも停泊のお願いがしてあるので気が楽だ

←灯台の絵画
 ところが,いつも停めるところに,先客のヨットがいるではないか,それも46フィートとでかいやつである。

 その大きさに圧倒され,横だきさせてくれとも言えず,わずかのすき間を見つけてやり付けする。そのヨットはエンジンはかかっているが,人影は見えず挨拶しようにもできない。冷房の効いたキャビンでゆっくり

しているのであろう。キャビンには風呂まで付いているのではないかと思われるほどの大きさである。


おじさん達の結論。こんなヨットに乗れるのは、医者か悪徳政治家に違いないと・・・ かなりひがんでいる・・・

 安乗に来た時は,いつも大洋荘に泊まっている。美人の女将に豪勢な料理でもてなしてくれるからだ。期待通り今回も昨日泊まった「かいゆ」同様に伊勢エビ,あわび,

ひらめで盛りだくさん,昨日同様におじさん達は頑張ったが食べ切れない。にもかかわらず,大洋荘はだめだとぼやいているおじさんが一人いる。私は,その本当の理由を

知っている。当初は,安乗でなく的矢湾に浮かぶ渡鹿野島にある某旅館に泊まる予定だったのである。   
             ここも豪華な料理→
  おじさん達3人の都合がつかず,キャンセルして大洋荘に急きょ変更になった。某旅館では「コンパニオン」の話が出ていて,その未練が今だに残っているのだろう。

 13日朝9時,安乗港を出港,

 的矢湾は風はさほど強くない。しかし,波はかなり悪い。セールを揚げるために船首を風上にむけると,上下の揺れが激しくとてもバウには立っておれない。

 定置網の竹ざおを避けて思いっきり,沖に出る。あとは,伊良湖岬まで一直線,出発日は,北西の風だったので,登りになるのではと心配していたが,今日

は東風でアビーム。今回の航海は,風には恵まれた。後は,オートラダーで昼寝していても勝手に伊良湖に着く。

さすがに伊良湖水道は,オートラダーというわけにはいかない。


本船(20ノット)に比べて我々のヨット(5ノット)は余りにも船足が遅いからである。いつも細心の注意をはらって通過する。にもかかわらず,航路上に釣り船が何十艘と群れている。

 魚群を求めた結果そうなったのであろうが,見ているだけで危険である。我々が水道を通過後,折しも本船の先導するパイロット船が来た。例の釣り船を蜘蛛の子を散らすように追い払っていた。

何か胸がすーとした。 三河湾に入ったら,うねりも波もなく,5〜6Mの東風でますす快走である。
 午後3時,ホームポートのポンツーンにもやう。予定より1時間早い6時間で来られた。

何のアクシデントもなく平穏無事の航海であったが,若い私(おじさんの中では)にとって物足りない航海でもあった。
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